教えて!新株予約権(ストックオプション)の税務の取扱い(国税庁)

2019 / 07 / 31

起業・創業を支援する品川区の税理士・ベンチャー支援税理士法人が創業した社長のよくある相談をお答え致します。

今回の相談は、「新株予約権(ストックオプション)の税務の取扱い」を国税庁のホームページから紹介いたします。

<国税庁 相談事項1>
権利行使価格が1円である新株予約権(ストックオプション)を 付与された場合の税務上の取扱いについて

1 事実関係当社は、当社および当社の100%子会社である日興コ-ディアル証券株式会社(以下、「子会社」)の取締役および執行役員(以下、「付与対象者」)に対して、当社の普通株式を付与する新株予約権(以下、「本件新株予約権」)を付与する予定でおります。本件新株予約権は無償で発行されるため、商法上の新株予約権の有利発行に該当し、商法第280条の21第1項に定める株主総会の特別決議を経て付与されます。
本件新株予約権は、権利行使時の払込金額(権利行使価額)を1株当たり1円に設定します。本件新株予約権の権利行使期間は、当該特別決議にもとづく新株予約権発行に係る取締役会決議において定められる当該新株予約権の発行日の翌日から15年以内としますが、付与対象者は本件新株予約権を付与された後、当社または子会社の取締役および執行役員を退任した日の翌日から5年以内かつ当該新株予約権の発行日の翌日から15年以内に、本件新株予約権の全株数について権利行使をすることが可能です。ただし、付与対象者が当社または子会社の取締役および執行役員を退任していない場合であっても、当該新株予約権の発行日の翌日から14年を経過した場合は、上記新株予約権の発行日の翌日から15年以内の行使期間中、本件新株予約権の全株数について権利行使をすることが可能です。
本件新株予約権は、その譲渡に取締役会の承認を要する旨(商法第280条の20第2項第8号)の決議がされ、当社と付与対象者との間の新株予約権割当契約には本件新株予約権の譲渡を禁止する旨の条項を盛り込むことになっています。また、本件新株予約権は、新株予約権者の請求があるときに限り新株予約権証券を発行する旨(商法第280条の20第2項第9号)の決議がされ、新株予約権割当契約書には付与対象者が当社に対し新株予約権証券の発行を請求しない旨の条項を盛り込むことになっているため、付与対象者に新株予約権証券が交付されることはありません。

2 照会事項(1) 照会の趣旨
本件新株予約権は、その権利行使時の払込金額(権利行使価額)を1円に設定するので、権利行使価額が付与時における当社の株式の時価を大幅に下回ることとなるが、本件新株予約権の付与時および権利行使可能となる時においては付与対象者に所得税の課税関係が生ぜず、権利行使時に課税関係が生ずるものとして取り扱って差し支えないか。
(2) 上記の見解となることの理由
所得税法施行令第84条第3号の規定によれば、商法第280条の21第1項に定める株主総会の特別決議に基づき発行された新株予約権を付与された場合の所得税法第36条第2項に規定する収入金額は、当該新株予約権の権利行使により取得した株式のその行使日における価額から、当該新株の発行価額を控除した金額とされております。また、所得税基本通達23~35共-6の2により、この場合における当該収入金額の収入すべき時期は、当該権利の行使により取得した株式等の取得についての申込みをした日によることとされています。
本件新株予約権は、無償にて発行され、商法第280条の21第1項(新株予約権の有利発行の決議)に定める株主総会の特別決議を経て発行されるため、所得税法施行令第84条第3号に規定する新株予約権に該当します。本件新株予約権に関しては、本件新株予約権を付与された付与対象者は、取締役または執行役員の地位を退任するまで、もしくは株主総会決議にもとづく本件新株予約権の発行日の翌日から14年を経過するまでは権利を行使することができず、また、本件新株予約権に係る新株予約権割当契約において本件新株予約権の譲渡を禁止する旨が規定され、更にその新株予約権証券を付与対象者に交付しないこととしています。
ところで、本件新株予約権は形成権(権利者の一方的な意思表示で法律関係の変動を生じさせる権利をいいます。以下同じ。)であり、かつ、その譲渡が禁止されていることから、その権利が付与された場合であっても所得税法第36条に規定する「収入」の実現はないため、権利付与時における課税関係は生じないものと考えます。また、権利行使が可能となった場合であっても、権利行使を行うまでは形成権である状態に変化はないことから、同様に課税関係は生じません。
したがって、本件新株予約権が付与されることについて課税関係が生ずるのは、その権利行使を行って形成権が株式引渡請求権に転じ、権利行使益が確定した時期と考えられますから、その経済的利益に係る収入すべき時期は、株式等の取得についての申込みをした日(権利行使時)とされます(所得税法施行令第84条第3号、所得税基本通達23~35共-6の2)。