プチ税務!事務所を借りる際の保証金はどうなる?

2017 / 02 / 11

起業・創業を支援する品川区の税理士・ベンチャー支援税理士法人が創業した社長へお届けする税務のプチ情報です。

今回のテーマは、「事務所を借りる際の保証金はどうなる?」です。

事務所や店舗を借りる際には、権利金や保証金を支払うことが多々あります。

この保証金や権利金はどのように扱われるのでしょうか?

国税庁のHPでは次のように記載してります。

「1.権利金の取り扱い

法人が建物を賃借するために支払った権利金、立退料などの費用で支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものは繰延資産となります。

ただし、不動産業者などに支払った仲介手数料については、その支払った時に損金の額に算入することができます。」

これだけ読んでもよく分からないですよね。

では、実務的な観点で整理します。

保証金とは、契約に際して将来の家賃の滞納や原状回復に必要な費用に充てるために契約時に支払うもので、

これらのリスクを保証するためのお金です。

一般的には店舗や事務所で家賃の月額の3~6か月分を支払うこととなります。

契約書をよく読んでみると次のように書かれたケースがあります。

「第×条 保証金は、契約終了時に家賃の3ヵ月相当額を償却します。」

これは、契約時に支払ってくれた保証金はもう3カ月分は返還しませんよ、

という内容なのです。

契約に際して、この辺の取り扱いを是非注意して頂きたいのですが、

先ほどの国税庁HPに書いてあった「権利金・立退料などの費用」とは、この権利金の償却部分、

つまり、家賃の3カ月分のことなのです。

契約期間が2年とか3年だとすると、この権利金の償却は、

「支出の日以降1年以上に及ぶ」

ということで、このような費用を繰延資産と言い、次の期間で費用処理することとなります。

 
2.償却期間 (国税庁HPより)

繰延資産となる権利金等の償却期間は次のとおりです。

(1) 建物の新築に際して支払った権利金などで、その金額が建物の賃借部分の建設費の大部分に相当し、かつ、その建物が存続する間は賃借できる場合・・・その建物の耐用年数の10分の7に相当する年数

(2) 建物の賃借に際して支払った(1)以外の権利金などで、契約や慣習などによって、明渡しの時に借家権として転売できることになっている場合・・・その建物の賃借後の見積残存耐用年数の10分の7に相当する年数

(3) (1)及び(2)以外の権利金などの場合・・・5年
ただし、契約による賃借期間が5年未満の場合で、契約を更新するときには再び権利金などの支払をすることが明らかであるときは、その賃借期間となります。

ただし、事業年度の中途での支出の場合は、「その事業年度の月数」は支出の日から事業年度末までの月数となります。この場合、月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数はこれを1か月とします。

(法法32、法令14、64、67、法基通8-1-5、8-2-3)

 
上記の内容もやや難しいですね。

一般的には(3)の取り扱いになります。つまり「5年間」で費用処理しなさい、ということです。

先ほど、契約期間が2年とか3年とか書きましたが、通常契約更新があります。

自動更新があるため、仮に契約期間が2年とか3年であったとしても

費用の効果の及ぶ期間は、2年とか3年ではなく5年となっているのです。

ただし、国などの行政のインキュベーションオフィスなどについては、初めから3年間のみ利用できる、

というケースがありますので、この場合には3年間の費用として処理することとなります。

事務所の保証金などは、費用にもならず、また費用になっても長い期間での費用となります。

したがって、創業して事務所を借りる際には保証金とこの償却の取り扱いに注意したいものです。