なぜ?売上債権の回収日数のチェックが必要なのか?

2017 / 01 / 29

起業・創業を支援する品川区の税理士・ベンチャー支援税理士法人が起業を検討する方に向けてのコラムです。

今回のテーマは、「なぜ?売上債権の回収日数のチェックが必要なのか?」です。

我々の会社では、創業を希望する方とお会いすることが多いです。

みなさん、自分のサービスや商品の魅力、市場規模を強く語る方が多いわけです。

売上見込みに基づいて事業計画を作って頂くわけですが、抜けているのが回収の期間。

創業して自社の商品の注文をもらうことは非常に大切ですが、更に大切なのがいつまでに入金してもらえるかなのです。

極端な例ですが、以前出版業で創業された社長様がいました。

出版業は、流通経路が複雑で売上から入金までの期間が非常に長いのです。

おおよそ、6か月から7カ月後に入金される業種なのです。

この創業された社長さんのアイディアで、どんどん企画が成功し出版した書籍の中には映画化される企画もあり、業績自体は非常に順調なのです。

ただ、問題は資金繰り。

初版の売上が入金される前に増版が決まると、印税の支払いや印刷会社への支払いがどんどん必要になり、

創業して内部留保がまだ少ない会社にとっては、銀行からの融資がないとどうしても回らない、

という状況になってくるのです。

この話を聞くと、自分の業種は1カ月後の入金だから大丈夫だと考えてしまいそうですが、

支払日が土日・祝日の場合の取り決めを決めておかないと、この1日でも資金繰りが厳しくなるのです。

では、すでに起業されている会社ではどうでしょうか?

1社ごとの支払条件の把握だけでは、会社全体として回収日数がどうなっているかは分かりません。

そこで、売掛金の回転日数を計算してみます。

売掛金の回転日数は、損益計算書の売上高を365日で割って、1日当たりの売上金をまず計算し、

期末の売掛金を1日の売上高で割って、回収日数を計算することとなります。

売掛金の回収日数= 売掛金の回収日数 ÷ (年間売上高÷365日)

また、得意先ごとの実質上の回転期間を計算し、把握しておく必要もあります。

先方の資金繰りが悪化して、数か月間入金がなかった場合や営業上のトラブルが発生して、

解決するまで支払いがストップした売掛金が含まれているかもしれないためです。

ここで是非覚えておいて頂きたいことがあります。

税務上、貸し倒れ損失の処理が厳しい条件がある、ということです。

例えば、利益の状況が厳しいため、回収の滞った売上先の貸倒処理を来期以降に延ばそうと考えたとします。

そして、利益が多く出たときに、回収不能として損失処理をしようと考えます。

税務上では、このような利益調整を認めたくないため、損失に落とせる時期を明確に決めているのです。

このように処理のタイミングを逸して残っている売掛金は、損失処理が難しくなってしまうのです。

話は戻って、売上の回収までの日数の考え方に戻ります。

人件費やその他の経費の支払いは、おおよそ1か月後に支払いがされることとなるため、

粗利に相当する金額は、30~45日に現金で回収できることが理想と言えます。

たとえば、 月商3000万円で粗利が15%なら、これを掛けた450万円は

少なくとも30~45日の回収を目標とするという意味です。

既存の取引先の回収条件の変更は難しいため、新規の取引の際には、

回収条件をよくする営業トークを作成しておき、できるだけ早い回収を目標としていきます。