教えて!エンジェル税制とは(その3)

2020 / 03 / 31

起業・創業を支援する品川区の税理士・ベンチャー支援税理士法人が創業した社長のよくある相談をお答え致します。

今回の相談は、「エンジェル税制とは(その3)」です。

エンジェル税制とは、ベンチャー企業への投資を促進するために

ベンチャー企業へ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度です。

現状の日本の税制では、上場会社の株式と非上場会社の株式は別々に取り扱うことになっています。

どういう意味かと申し上げますと、以前は、こんなことも可能でした。

自分が運営している法人の株式を100%所有していたとします。

もちろん上場していません。

この会社のオーナーが、上場会社の株式の売買で大きく損を出したとします。

この損失を、自分が運営している法人の株式を子供に対して譲渡したとします。

会社運営を上手にしていた場合には、設立時より会社株価は高くなります。

(親族間での株式の譲渡には売買代金を税務上の金額で適正に計算する必要があります。)

自分の運営している会社の株式の息子への譲渡による利益を、上記譲渡損失と相殺することにより

税務上課税されることなく、株式を息子に対して譲渡することができたのです。

ただ、現状は、上場会社の株式の売買と非上場会社の株式は別々に取り扱うこととなっているため、

上記のような利益と損失の相殺が今はできないのです。

 
そこで、エンジェル税制が必要となります。

これは、上記上場会社と非上場会社の利益や損失の相殺を認めてくれる特例なのです。

そして、
・個人投資家が投資を行った場合の投資時点での優遇か、
・投資家がその株式を売却時点で優遇するか
のいずれの時点でも税制上の適用を受けることができます。

株式を投資した時点で、投資金額を

・ふるさと納税のように寄付金控除できる場合と

・株式の譲渡損失として上場会社の株式の譲渡益と相殺できる

場合があります。

ただし、上記のような手続きにより購入金額について、費用や寄付として税金で資金回収をしていますので、

原則、エンゼル税制の適用を受けた株式は、取得価額(払込金額)がほぼゼロ円となります。

つまり、将来売却する際には、売却代金がそのまま課税されることとなります。

ここでさらに注意が必要なのが、この売買益と上場会社の売買損失とは相殺できない

という点です。

意味が分かりにくいですが、上場会社の売買損を補填する意味でなないためです。

今年の確定申告で作業していると、この点の理解が難しく判断を間違っているケースがありました。

あくまで、エンジェル税制で生じた購入や売却の損失を上場会社の利益と相殺する

という点はおさえておきたいです。